「アスペルガー症候群」
私自身がアスペルガー症候群だと気がついたのは、38歳の時だった。
障害者児童支援センターの方と知り合う機会があり、
週に一度ほどのペースでお話をお伺いした。
支援センターは郊外の廃校になった小学校を改装して利用されているもので、
周辺には大きな樹や緑の芝生、かもの来る池などがあり、
自然に囲まれたすばらしい施設だった。
お会いするたび私が子供の頃から感じていた
他者と違うのではと感じてきたエピソードなどを話した。
ある日、先生に、
「もし周辺に発達障害があると思われる人物が、
自分でそれと気がつかずにいて、
苦しんでいるとしたら先生はどうなさいますか?」
と質問した時、直接それとは言わず、
日々の会話や接し方の中で本人が自然に気づくようにする
というような趣旨のことをおっしゃった。
私は他者のことを想定して言ったつもりだったのだが、
先生の答には私のことも含まれていたのかもしれない。
支援センターに通い始めて一年がたった頃、
本当にごく自然に私は自分が発達障害、
おそらくはアスペルガー症候群なのだと言うことに気がついた。
それはすっと私の中に降りてきて、
それまで感じていた違和感、
人によっては生きにくさなどと表現するたくさんの事柄がつながった。
その頃には私はたくさんの壁にぶつかり、
そのたびに傷ついたり落ち込んだりしながらも、
自分の苦手なことの数々を克服していた。
それでも、普通よりは少しばかり大変かもしれないが。
その後、発達障害専門の医師と知り合い、
間違いなくアスペルガー症候群だと太鼓判を押された。
アスペルガーだとわかったとき、
私の心に最初に浮かんだのは周辺の人々、
両親や、特に私が一番不安定だったと思われる
学生時代をともにすごしてくれた友人たちに対する
深い感謝の気持ちだった。