食事とは薬である。
これが薬膳治療の根本です。
これを薬食同源(or医食同源)と言います。
長い歴史の中で病気治療の他に、食物の研究も発達しました。
食材と生薬(中薬)にはそれぞれ性質・薬効と味を持っていて(五味、五性)その効能が効果的に入りやすい五臓六腑があります。
東洋医学の見立て(四診・弁証立法)を元に、年齢、性別、体質、体調、生活環境などにあわせて食事をする、というのが薬膳です。
食材と生薬(中薬)を使って食養生、健康維持(美容、老化防止なども含む)、病気の予防と改善となどを行います。
薬膳治療における食事の分類
食用=季節や場所、状況に応じて栄養バランスの良い食事
食養=美肌、老化防止などを目的とした食事で、予防として日常的に行うのが望ましい
食療=不調の改善を目的とした食事で、東洋医学の診断「四診」の結果、「証」をたて、治療方針を決め(弁証論治)、一人一人の状態に合わせて不調改善効果が期待される食材と調理法を選ぶ
薬膳=食療に加え、生薬を加えた病気を治すための食事
(この他に「食忌=飲食において行ってはならない事」も含む)
これから言うと季節外れの食材で、栄養バランスも考えないものは「食事」とすら言わないようです。
「なんっちゃって薬膳」
最近はクコの実や松の実、その他生薬を使えば薬膳としている「なんちゃって薬膳」の店や資格講座、料理本などが増えていますが、それは「薬膳風」と言うだけで、本来の薬膳とはかけ離れたものです
それを食べて健康や美容などに効果が期待できるとは考えない方が良いでしょう
健康とは日ごろからの心がけが大事なのであって、その時だけ健康によさそうなものを食べれば何とかなるというものではありません
五性(五気)、五味(または六味)、五季、昇降浮沈、調理法
薬膳治療でも漢方治療と同じ「五味」「五性」の考え方を元にしています。
薬膳治療では更に「五季」「昇降浮沈」の考え方を取り入れ、それらを組み合わせます。
体質別に調理法も考慮します。
五性
身体を冷やす食べ物と温める食べ物があり、体質や体調などに合せて選ぶ。
五性 |
作用 |
作用の強さ |
代表的な食材 |
寒性 |
体の熱をとる 毒を排泄
便通を整える |
強い |
ニガウリ、スイカ、豆腐など |
涼性 |
同上 |
弱い |
胡瓜、大根、セロリなど |
平性 |
陰陽のバランスを取る
作用が穏やかでどの体質にも使える |
― |
キャベツ、山芋、ハトムギなど |
温性 |
身体を温める 痛みを止める
気・血の循環を促進する作用が弱い |
弱い |
生姜、栗、エビ、鶏肉など |
熱性 |
同上 |
強い |
山椒、唐辛子、胡椒など |
五味
食物や生薬にはそれぞれ違った味があり、効果的に作用する五臓六腑があると考えます。
五味 |
対応する五臓 | 作用 |
酸味 |
肝臓 | 筋肉を引き締める 津液を生じ体を潤す 固める |
苦味 |
心臓 |
便通を良くする 湿を排除 解毒 熱を下げる |
甘味 |
脾臓 |
脾胃を中和する 痛みを和らげる 虚弱を補う |
辛味 |
肺 |
気血の流れを促進 痛みを止める 冷えを改善 |
カン味 |
腎臓 |
固いものを柔らかくする 塊を解消 便通を良くする |
※カン味とは塩辛い味の事
五季
季節により適した食材が違い、季節により影響を受ける臓器が違い、とった方が良い(あるいはとらない方が良い)五味、五性があると考えます。
春夏秋冬に加え、中国では黄河流域で年間を通して一番雨の降る時期を長夏としています。
黄河流域から日本では5~6月の梅雨の時期がそれにあたります。
「陰の時期=昼より夜の方が長い」「陽の時期=夜より昼の方が長い」の変化が人間に影響を与えるとしています。
春=肝臓を補い、陽気(浮き立つ、興奮)を鎮め、気の流れを良くする
夏=心臓を守り、夏バテの予防に熱を冷まし、気・津液を補給します
長夏=湿気の為に脾臓に影響が出やすいので、脾臓の働きを補い、気の巡りを良くし、水分代謝を良くします
秋=乾燥により肺に影響が出やすく、乾燥を防ぎ、身体を温め、肺気を補う食材を選びます
冬=寒さにより冷えなどから風邪になりやすく、身体が固まり、休む時期です。この時にエネルギーを蓄える腎臓を補い、身体を温めることが大切です。
昇降浮沈
食物や生薬の効能が作用する方向のことです
昇浮(発散、向上、向外)=体表に作用し、発汗により排泄
降沈(沈下、向下)=体内へ作用し、尿・便として排泄
調理法
体質に合わせ調理法・料理を選びます。
熱がりの人=揚げ物、炒めもの、カレーなどの料理は避ける
寒がりの人=生野菜や刺身などは避ける
食材ごとに五味、五性、関連臓器、効能、適応症などを書いた本なども出ていますので、興味を持たれた方は購入されることをお勧めします。